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HPLCを用いた物質溶出法には単一移動相によるアイソクラティック溶出(isocratic
elution)と複数移動相の濃度勾配によるグラジエント溶出(gradient elution)の二つがあります。
グラジエント溶出とは、組成の異なる数種類の移動相比率を変えながら溶質を固定相に吸脱着させる方法で、送液ポンプには異なる移動相を取り扱う役割が課せられます。
グラジエント溶出法に用いられるグラジエント送液システムには二種類があります。「高圧グラジエントシステム」と「低圧グラジエントシステム」です。この「高圧」「低圧」というのはUHPLCのような超高圧で分析するかどうか、ということではありません。
「高圧グラジエントシステム」とは二台のポンプによる混合システムで「バイナリポンプシステム」とも呼ばれます。移動相混合はポンプの後、つまり「高圧下」でおこなわれるので「高圧グラジエント」と呼ばれます。
「低圧グラジエントシステム」は一台のポンプによる混合システム(1ポンプグラジエントシステム)のことで、4液混合の場合「クォーターナリーポンプシステム」とも言われます。移動相混合はポンプの前、つまり「大気圧(低圧)下」でおこなわれるので「低圧グラジエント」と呼ばれます。
HPLCの黎明期には送液ポンプが高価であったために、一台でグラジエント送液が可能な方法として、移動相を切り替える「切替弁」をポンプの前に配置し、混合された移動相を一台のポンプで吸引吐出する方法が採用されました。現在は4種類の移動相が選択できるので一見「便利」なシステムに見えますが、「低圧グラジエントシステム」には大きな落とし穴が存在します。それは「切替弁」とポンプ後の「ミキサー」です。
切替弁には電磁弁を使う場合とスイッチングバルブを使う場合があります。さらに切替動作が速いか遅いかによって流れる移動相量が変わります。
移動相を切り替えるだけでは混合はできませんから、ポンプの後に切り替えた移動相量よりも大きな容量の「ミキサー」で均一に混合する必要があります。ミキサーの容量によってグラジエントの「遅れ容量」が変わる、つまりグラジエントの開始時間が変化することになります。
このように一台のポンプを用いる低圧グラジエントシステムでは、切替弁やミキサーなどの容量や切替速度の違いがグラジエント装置ごとに発生するために装置間差が生じ同じクロマトグラムを得ることが困難となります。全く同じ型番の装置を使わないと室間再現性も失われます。
一方高圧グラジエントシステムは通常二台のポンプの流量を変化させることにより二種類の移動相比を替える方式で、現在のように流量精度の高いポンプであればメーカーが異なっても同じグラジエント勾配が得られます。移動相を混合するミキサー容量も小さく場合によってはT-ユニオンでもかまわないために、グラジエント精度や室間再現性が向上します。この理由により高価なLC-MSシステムではバイナリーポンプシステムが一般的となっています。
安価で便利そうな低圧グラジエントではいろいろなトラブルが生じ、カラムが原因かのように扱われることがあります。カラムメーカーとしては高圧グラジエントの普及が強く望まれます。
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