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HPLCカラムには寿命があります。外観はステンレスであっても内部はシリカやポリマー粒子が充填されたもので、試料や移動相が通過するストレスからカラム内の充填状態が徐々に変化したり、固定相表面が化学的に変化することによって、分析結果に何らかの変化(劣化)が生じます。
カラムが劣化したかどうかを判断する方法について以下に解説します。
1. 分析対象物質の測定値の変化を追跡する
カラム劣化を判定する最良の方法は、分析対象物質のピーク形状を判定することです。
測定対象ピークの高さや理論段数の変化を追跡する最も実用的な方法です。
これらの計測値の初期値を記録しておき、分析できないと判断される計測値をそのカラムの使用限界と判断します。
分析方法によってはピーク形状だけでなく、保持時間の変化やカラム圧力の上昇などに関する限界点を設定することも必要です。
2. 分析対象物質と近接する不純物ピークの分離度(Rs)を測定する
分析対象物質および近接する不純物ピークとの分離状態を分離度(Resolution,
Rs)」で管理する方法で、HPLC分離分析が重要な場合に有効な方法です。
カラムが劣化するとピーク幅が広がってくるため、分離度は低下します。分離度の許容限界値を設定して、それ以下に低下した場合カラムの寿命と判断します。
可逆的な劣化の場合はカラム洗浄によって回復できる可能性がありますが、固定相の化学的変化や充填状態が変化する場合は不可逆的でありカラム性能の回復は期待できません。
3. 手持ちの標準物質を使って定期的に測定する
上述の1および2は実試料を用いる現実的な管理方法ですが、分析対象物質が極めて低濃度、構造的に不安定な物質、良好ではないピーク形状など実用的な管理が困難な場合は、身近にある安定な化合物を代替物質としてその分析法を確立しておき、カラム劣化の管理法として用いることが推奨されます。この場合固定相の性質に即した試料構造や移動相など、堅牢な分析法を確立する必要があります。長期的な運用テーマの場合、このような標準的分析法を作成して管理することはカラム性能の変化を客観的に把握する有効な手段と考えられます。
4. メーカー出荷検査条件で測定する
HPLCカラムには出荷時の検査データ(Certificate of Analysis, COA)が添付されています。
製造カラムの充填状態と性能が所定の規格内にあることを記録したものです。インタクトでは分析条件として移動相組成の他、分析対象物質の濃度も表記しています。また
Prod# と Ser# を入力することで以下のように COA を再発行することもできます。
[IMTAKT COA
再発行プログラム]
カラム購入時にこのCOAに準じた分析を実施し、ピーク形状の劣化状態と許容限界値を設定することにより、カラム交換時期の目安を得ることができます。
ただしHPLC装置が異なるため、メーカーのCOAデータとユーザーの分析値は必ずしも同じにはなりません。したがってユーザー自身が測定した初期性能値を基準とする必要があります。
カラム劣化を判断する際に「カラム寿命が短い」と感じられる場合は、カラム性能を疑う前に、分析法が堅牢かどうかの見直しが必要かもしれません。
[参考資料]
HPLCカラムが劣化する原因について
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