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HPLCカラム圧力が低下し保持が長くなった


HPLC分析において,突然圧力が低下して溶質の保持が長くなることがあります。
分析圧力低下が生じたとき,カラムに原因を求める前に検討すべきことがあります。それは「HPLCポンプ」です。

現在の一般的なHPLCポンプは「ダブルプランジャー」型ポンプです。これは二つのポンプヘッド内にある二本の「プランジャー」が位相180度で交互に動作して,移動相を吸引・吐出することにより低脈流送液が可能になる構造をとっています。
プランジャーが移動相を吸引・吐出するには「チェック弁(チェックバルブ)」という方向性を持った耐圧性の弁が各ポンプヘッドの前後に必要です。一般的な並列ポンプの場合,全部で四つのチェック弁が存在します。

週末にHPLCを停止して翌週明けに再稼働するときに頻繁に遭遇するのが「流量低下」です。移動相が流れない状態がしばらく続くと「いずれかのチェック弁が不調」となり,プランジャーが移動相を正常に吸引・吐出できなくなることがあります。決してカラムが壊れたわけではありません。
チェック弁は開閉することで移動相の通過を制御する「逆流防止弁」として,高圧安定送液に不可欠な部品ですが,ゴミがからんで弁に隙間ができることで移動相が逆流したり,移動相成分が糊のように張り付いて弁が開閉できなくなったりするトラブルが発生します。

両方のポンプヘッドのチェック弁が機能しない最悪の場合は,移動相が全く流れなくなりますが,これは見た目ですぐにわかります。
問題となるのは,流量が半分に低下したとき,圧力も半減し保持が大幅に伸びる現象です。ここでユーザーがHPLCに慣れているかどうかの実力が見えてきます。慣れたユーザーはまず装置を疑いますが,慣れていないユーザーはまずカラムを疑います。ポンプヘッドに見た目の変化はないし,移動相は流れているからです。分析ができているのでユーザーはどうしてもカラムを疑いたくなります。

片方のポンプヘッドのチェック弁が不調で他方のポンヘッドが正常な場合には,設定流量の半分がカラムへ流れます。流量は半分であるため圧力も半分になる一方,保持時間は二倍にのびます。
勘の良いユーザーは「圧力の半減」は「片方のチェック弁の詰まり」とすぐに気がつくことができます。しかしどのチェック弁が詰まっているかはわかりません。並列型ダブルプランジャーポンプにはIN/OUT合計4つのチェック弁がありますから,詰まっているチェック弁を特定するだけでも大変な作業となります。さらには不調のチェック弁を取り外して分解掃除してやらないといけません。そして取り付け後に流量が正常かどうかの検証も必要となります。作業が半日におよぶこともあります。不調チェック弁の特定方法や洗浄方法など,チェック弁のメンテナンスには結構な腕前が必要となります。

もっと厄介な現象は,チェック弁に気泡が絡む場合です。気泡が絡むと流量低下を引き起こしますが,放っておくと気泡が抜けて元に戻る場合があり,分析中にこれを繰り返すとクロマトグラム上のピークの保持に再現性が得られないことになります。これは流量が正常に見えますから,概ねカラムに疑いがかかることになります。クレームを受けるとたいへん困る厄介なトラブルです。
保持の再現性が得られない場合は,「気泡が絡んだ」か「メソッドに堅牢性がない」かのどちらかが一般的です。この場合にまず必要なことは,ポンプ圧力モニターを使って分析中の圧力変動を記録確認することです。

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)は機械(高速液体クロマトグラフ)を用いた作業です。分析をするには機械操作に慣れる必要があります。

WK07 / 矢澤  到 [YAZAWA Itaru, hplc@imtakt.com]

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