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イオン対クロマトグラフィーまたはイオンペアクロマトグラフィー (ion-pair chromatography)
という手法があります。高極性のイオン性物質がODSなどの逆相カラムに対して疎水的に保持できないとき、カウンターイオンを有するアルキル化合物(イオン対試薬)を移動相中に添加すると保持できるようになる、という手法です。
一見便利そうに見えますが、この手法には「大きな落とし穴」があります。移動相の再調製やカラム交換によって保持の変動が頻繁に生じるのです。
その根本的な原因として考えられることは、カラム内における溶質とイオン対試薬との間にはたらく相互作用には二つの状態があり得ることです。
1) 溶質-イオン対試薬間のイオン結合が強い場合
イオン対クロマトグラフィーのイメージどおり、高極性の溶質はイオン対試薬との塩形成によって疎水性化合物に変形し、ODSなどの逆相固定相に対して疎水的に吸脱着します(上図:逆相モード)。
2) イオン対試薬の疎水性が高い場合(落とし穴)
イオン対試薬がODSなどの疎水基と強く疎水的相互作用する結果、固定相は「逆相モード」から「イオン交換モード」に転換してしまいます。その結果溶質に対しては「イオン交換カラム」として機能することになり、本来の疎水性による逆相モードの関係が崩れ去ることになります(上図:イオン交換モード)。
イオン交換モードは相互作用が強いため、イオン強度のグラジエントが必要なのですが、この場合単一移動相のために弱いイオン交換作用によるイオンクロマトグラフィーのようなアイソクラティック溶出となります。
1)のような弱い疎水的相互作用であれば再現性が得やすいのですが、2)のような強いイオン的相互作用の場合はイオン対試薬の濃度が少しでも変化すると相互作用に大きな影響を与え、保持も大きく変化します。移動相の調製順序で保持が変動することもあります。一般にイオン対試薬はmM単位で添加するため、わずかな濃度変化であっても対イオンとなる溶質の保持に影響します。
さらにはイオン対試薬を疎水的に保持するため固定相のリガンド量の差がイオン交換基の数の差となるためにやはり保持に差が出やすくなります。このため、同じ移動相でもカラムを替えると保持が異なる場合が生じます。
カラムを替えたとき保持が異なるおもな原因は、異なる充てん剤バッチでは固定相リガンド量が全く同じではないことです。高分子であるシリカ基材の細孔径や比表面積を全く同じ値にすることは不可能です。物質分離における分子間相互作用は溶質1分子と固定相1分子の相互作用の集まりであり、無機高分子で面積が一定しないシリカ表面に結合させたリガンドの数を分子レベルで揃えることはほぼ不可能といえます。製剤中の有効成分の含有量をアボガドロ数レベルで同量にすることがほぼ不可能であることと同じです。有効成分含有量を一定の範囲内で管理するために分析が必要になるわけです。カラム製造でも品質管理は実施していますが、リガンド量が分子レベルで同じものを長期間提供することは同様に不可能です。
イオン対試薬を用いるイオン対クロマトグラフィーは、実際には前述の1)と2)つまり疎水的相互作用とイオン的相互作用が同時にはたらいていると考えられます。しかもアイソクラティック条件におけるイオン交換クロマトグラフィーでもあるため、再現性が得にく危険な手法であると思われます。再現性にはイオン対試薬のイオン性とアルキル鎖長、さらには溶質のイオン性の強さもかかわっています。したがってカラムの再現性だけを議論することは適切ではありません。
イオン交換クロマトグラフィーにおけるイオン的相互作用は逆相の疎水的相互作用よりもはるかに強いため、アイソクラティック溶出ではなくグラジエント溶出が強く推奨されます。
インタクト社では以下のような逆相+イオン交換型のカラムを提供しています。
Scherzo SS-C18, SM-C18, SW-C18 カラム
これらを適切に使うことによりイオン対クロマトグラフィーよりも再現性の高い逆相+イオン交換モードが得られると考えられます。何よりも揮発性塩が使えるのでLC-MSに最適な手法です。
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