カラムのコラム (Columns for Columns)

 

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なぜ 150 x 4.6 mm ?

2001/05/09

ODSカラムで一番使われているサイズは内径4.6mm,長さ150mm (以下 150 x 4.6 mmと表記します)です。
なぜでしょうか?

いろいろな人に尋ねた結果は以下のような答えに集約されます。

(1) カラムあたりの理論段数が1万段あるので分離がしやすい
(2) 薬局方や文献に多く登場するから
(3) カラムメーカーの標準的サイズだから
(4) 手元にこのサイズがあるから
(5) 深い理由はない

番号順に理由が曖昧としています。(1)のような答えにはあまり出会いませんでした。もちろん分離性能を必要とする人が 250 x 4.6 mmサイズを常用している例は多々ありますから,世の中が決して150 x 4.6mmだけというわけではありませんが,この15年間はこの150x4.6mmサイズがODSカラムの主流であったことは否定できないと思います。

では,それ以前はどうだったのでしょうか?
1970年代,充てん剤の粒子径が5umではなかったころ,一般的なカラムサイズはもっと大きなものでした。たとえばW社のカラムのように10um粒子で300 x 3.9 mmなんていうものもありました。この時代のカラムサイズは7-10um粒子による250x4.6mmが一般的で,70年代後半に5um粒子が登場すると,250mmカラムは高分離能カラム,汎用カラムとしては150mmあるいは125mmのような長さに移行し始めたと記憶しています。
250mmの3/5の150mmや,1/2の125mmというように,どうも250mmが基準となって短いサイズが決定されてきたように感じられます。

また80年代前半までは充てん剤を購入し自分で充てん(自家充てん)する人たちが大勢いました。それぞれが充てん技術を競い合っていたものです。当時カラムユーザーであった筆者もそのひとりです。当時のLC装置メーカーの技術資料には「カラム充てんの方法」という図入りの記述があったことを記憶しています。
80年代後半に入り,5um充てん剤が定着し,安価なカラムが出回り始めると,もう面倒くさい自家充てんは流行らなくなりました。替わってカラムメーカーのいうところの「パックドカラム (Packed Column)」を使い始めたわけです。ここでメーカーの思惑がはたらいて(つまり売りやすいカラムサイズとして) 150 x 4.6mmが定着したようです。もちろん理論段数が1万段以上で,使いやすく,自家充てんよりも再現性の高いカラムというふれ込みで・・・
このように80年代後半以降のODSカラムは,高分離能カラムが250x4.6mmで,汎用サイズが150x4.6mmという位置づけで,カラムメーカー各社のカタログに標準的サイズとして記述されるようになり,結果としてユーザーも選択する機会が増え,薬局方のメソッドを作られる方々も入手しやすいサイズとして取り上げる,という傾向が生まれたのではないかと思います。

しかし,少なくともこの15年続いてきたこの150x4.6mmという標準的サイズは,恒久的な究極のサイズなのでしょうか?
「環境を配慮した溶媒消費量の削減」や「ハイスループット分析」など,分析部門に求められる分析コストや効率化といった要求は,もはや150x4.6mmを何も考えずに選択していればよいという時代ではないことを示しています。LC装置の高性能化とカラム性能の向上は,業界に身を置くものとして,真剣に考えなくてはならない課題と考えます。筆者がたずさわるカラムビジネスもそのような思いからスタートしています。

LC-MSの普及とともにODSのカラムサイズは多様化の時代に入りました。分析目的や分離条件に応じた最適なカラムサイズがあると筆者は確信していますし,いうまでもなく最近の多くの先進ユーザーが実践し始めています。IMTAKT(インタクト社)が推奨している,1万段を超える理論段数を有する75x4.6mmカラムも,多くの方々に支持されるようになってきました。
ODSカラムの歴史が物語るように,カラムサイズの変遷はこれからどのようになっていくのか,インサイダーとして注目しています。

(矢澤  到)