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HPLCカラムの構造
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カラム構造図 | |||||
高圧下で使用されるHPLCカラムには耐圧性に優れた材料が必要で,ODSカラムでは一般にステンレスが用いられています。 充てん剤を充てんする容器のことを一般にエンプティカラム(あるいは空カラム)と呼んでいます。エンプティカラムは大別して,カラムパイプ(カラム管)とエンドフィッティングからできています。 カラムパイプは内面のきれいな直管で,内径は分析用で4.6mmや2mmなどが一般的ですが,メーカーによっては4mmや3.9mm, 2.1mmなどもあります。 パイプを作るには,ステンレス板を丸める方法もありますが,内面の均一さが重要なカラムパイプにはシームレス管という継ぎ目のないものを用いるのが一般的です。 エンドフィッティングは二つの役割があります。カラムと配管チューブを接続するためのコネクタとしての役割と,フィルタ構造をしたフリット(frit)と呼ばれる円盤状の部品により充てん剤が外部に漏れないようにする役割です。 またカラムによっては注入試料溶液をカラム内に均一に分散させるためのディストリビュータという構造がエンドフィッティング内部に組み込まれている場合もあります。
カラムパイプにエンドフィッティングを接続する方式としては2種類があります。フェラル式とねじ込み式です。 カラムのエンドフィッティングにはHPLC配管に接続するための雌ネジ構造があります。 HPLC装置には通常1/16インチの配管チューブが使われており,カラム側の雌ネジはこれを接続できる構造になっています。ネジはNo.10-32UNFというインチ規格です。これは近年のおもなHPLCメーカーやカラムメーカーで採用されている統一的な規格ですから,カラムと装置のメーカーが異なっていても,ほぼ接続互換性がとれています。厳密にはフェラル先端長がHPLCメーカーによって微妙に異なりますが,最近はカラム接続にPEEK製のコネクタが用いられるので,普通のカラムで接続エラーを生じることはほとんどありません。 カラム接続は各社共通化されましたが,カラム性能を決める重要な要素のひとつであるエンプティカラムの内部構造は,どのメーカーも同じというわけではありません。内径や長さ,使用目的に応じていろいろな工夫が必要だからです。たとえば内径が20mmという太いカラムでは,配管チューブ内径(通常0.25mm)との差が大きいため,注入試料の拡散のためのディストリビュータの構造を工夫する必要があります。反対に内径1mmという細いカラムで肉厚のフリットを使うと,注入試料が拡散して性能が低下してしまいます。 高いカラム性能を引き出すためには,充てん剤の開発だけでなく,エンプティカラムの設計がとても重要になります。ユーザーの多様な分析業務を支援するために,一本のカラムにも見えない部分でいろいろな配慮がなされています。 ( 矢澤 到 / インタクト株式会社, YAZAWA Itaru / Imtakt Corp. ) |