カラムのコラム (Columns for Columns)

 

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LC/MS?それとも LC-MS?

2002-02-05

個人的に過去予想していた以上に,LCの検出系としての質量分析装置が普及しています。 80年代に急速に普及したガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC-MS)の勢いをしのぐほどではないかと想像しています。

ところでこの質量分析装置をLCにオンライン接続したとき,どのように表記するでしょうか。
ほとんどが "LC/MS" か "LC-MS" です。感覚的ですが現在のところ "LC/MS" が多いように感じられます。
確かに GCのときは "GC/MS" という表記が大半であったと記憶しています。この流れにのるなら "LC/MS" が妥当のように見えます。また,おおかたのMSメーカーでもこの表記を使用しています。筆者も過去 "LC/MS" と考えていました。
しかし,最近この考えを改めました。

分析技術の発展に伴って,近年はLCの検出系にいろいろな装置が接続されるようになってきました。 赤外分光分析計(IR),核磁気共鳴装置(NMR),GCで汎用的であったFIDなど。
これら新しい検出系をLCなどの分析機器に接続する技術を総称して "Hyphenated Techniques" と呼んでいます。
直訳するなら "ハイフン(-)で結ぶ技術" ということになります。つまり, LC-NMR, LC-IR, そして LC-MS というように,異なる装置を連結して連続的に分析する技術,ということができます。
また,この分野の国際学会もあります。

International Symposium on Hyphenated Techniques in Chromatography and Hyphenated Chromatographic Analyzers (HTC)

この学会の名前そのものが,連結技術を表しています。
ちょうど今の時期に学会(HTC-7, 2002.2.6-8)があるようですが,発表の中にはLCのセッションもあり,"HYPHENATED LIQUID CHROMATOGRAPHY"というセッション名になっています。
このように,学術的に,装置の連結技術を "Hyphenated Techniques"という以上,LCとMSを連結する場合,"LC-MS" というHyphen (-) を使用する表記が妥当ではないかと考えるわけです。

最近 LC-MS に関係する学術発表が増え,それぞれのタイトルが "LC/MS" だったり," LC-MS" だったりするのはたいへん気になるところです。どちらも本質は同じだから深く考えなければそれでよいのでしょうが,学術用語の表記というのはできるだけ統一されている方が安心です。

新しい技術に関するいろいろな呼び方は,結局は歴史が淘汰するものなのでしょう。表記に違和感がなくなってはじめて,本当に定着した技術ということが言えるのだと思います。その意味ではまだまだLC-MSは発展する余地があるということでしょうか。

(矢澤  到)