15年ぶりのコラム <28> を本年1月に再開し,その際に「 HPLC便利ツール 」をご紹介しました。
公開当初はほとんどアクセスはなかったのですが,Googleなど検索エンジンのおかげで,半年後の最近は急速にアクセスが増えています。特に「試料濃度計算ツール」は毎日たくさんの方にご利用いただいており「大人気ツール」となっています。
「便利であってほしい」と思ったツールが実際に使われることは,カラムが世界中で使われるのと同様に,設計者としてはたいへんうれしく光栄なことです。
これに気をよくして,次のプログラムを作成してみました。
試料溶液から検量線溶液などを希釈調製するための計算ツールを考えました。2倍希釈であれば計算は不要ですが,原液と異なる濃度単位で希釈するとなると,単位変換が必要となるため,計算がややこしくなります。たとえば原液が「%」で希釈後が「mM」のようにモル質量が絡む場合です。
原液濃度と目的濃度の単位が異なる場合,プログラミング上どちらかの単位に統一しないと希釈倍率計算ができません。しかも濃度単位はたくさん考えられるので,計算式は単純でもアルゴリズムとしては少々複雑になります。
そこで溶液濃度を確実に単位変換できるルーチンを作ることにしました。そしてルーチンを考えるだけではもったいないので,これをひとつの成果として「濃度単位変換ツール」を作成することにしました。
濃度単位を変換したいことも希にはあります。 たとえば
28% アンモニア水は何モル/Lでしょう?
まずアンモニアのモル質量「17.03
(g/mol)」を入力します。高濃度溶液の場合密度を入れないと正確な計算結果が得られない恐れがあります。28%アンモニアの文献としての密度「0.9」を入力します。 次に初期濃度「28」と入力,単位「%」を選択します。 変換したい濃度単位を「M
(mol/L)」と選択して「計算」ボタンをクリックすれば,変換濃度:14.79 Mが得られます。
低濃度溶液の場合は密度を「1」と仮定します。 HPLC で多用される 0.1% ギ酸(モル質量 46
g/mol)のモル濃度は,「21.7 mM」と計算できます。
濃度単位変換ルーチンができたので,これを応用して希釈計算ツールを開発しました。
濃度希釈は単位が同じであれば簡単ですが,本ツールは単位が異なる場合にも対応しています。
(例) 1% グルコース溶液から
10 μmol/mL の試料を調製してみます。 モル質量 180.156 (g/mol) を入力,原液濃度 1%,目的濃度
10 μmol/mL と入力します。 次に原液量をたとえば 1 mL と入力して,「計算」ボタンを押せば, 目的溶液量は 「5.55 mL」と表示され,原液量との「液量差 (希釈に必要な溶媒量) 」が 4.55 mL と計算できます。
逆に最終的に 5mL 溶液を得たいなら, 目的溶液量を 5 mL とし,原液量フィールドをクリアして「計算」すれば,原液量
「0.90 mL」と算出することもできます。
以上のように,試料溶液や移動相の希釈など HPLC
を取り扱う際の濃度変換作業が簡便になることが期待されます。
ちなみに
英語版 も用意しました。 本ツールが世界のHPLCユーザーにとって便利なものであることを願っております。
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