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充てん剤粒子は小さいほど良いのでしょうか? <その2>
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Sub-2μmカラムが必要な人たちがいることもわかりますし,微粒子カラムの存在を否定するつもりもありません。 ポンプヘッドにはカラムから「バックプレッシャー(背圧)」がかかります。このバックプレッシャーは充てん剤粒子径の二乗に反比例します。例えば同じサイズの3μm粒子カラムを2μm粒子カラムにするだけで
(3x3)/(2x2)=2.25倍も圧力が高くなります。3μmを半分の1.5μmにすれば圧力は4倍に高くなります。 カラムにも圧力の影響が大きく現れます。 充てん剤の微粒子化により理論段数は向上しますが,それは「粒子径に反比例する」向上しか期待できません。たとえば3μmカラムを同サイズの1.5μmカラムに替えても理論段数は2倍しか向上しません。 「分離」を考えるために,以下のようなシミュレーションソフトを開発しました。 このアプリは,2ピークの分離に関して保持時間や理論段数,分離度のどれかを入力して残りのパラメーター値を導く,というものです。 たとえば tR(1) = 10.0min, tR(2)=10.3min, N=10000 というピーク分離を想定します。 この結果,二つのピークの分離度(Rs)は 0.74 で,クロマトグラムを見ても不完全分離であることがわかります。 充てん剤を微粒子化(理論段数を向上)して完全分離(Rs=1.5)にした結果が次です。 完全分離は実現できましたが,理論段数は当初の約4倍が必要となります。 簡単に分離改善する方法があります。それは「保持を引き離す」ことです。 ピーク2の保持時間を10.3分から10.6分,たった0.3分延ばすだけで完全分離することができるのです。粒子径が同じなら圧力も同じです。微粒子カラムは必要ありません。 答えは簡単。移動相組成などの分析条件を変更するか,性質の異なる固定相(カラム)を用いるか,です。 1) 分析条件 溶質1と溶質2の構造の違いを把握し,固定相との分子間相互作用を考慮して分析条件を見直します。たとえば pH,イオン強度,有機溶媒種,温度などの変更です。 2) 固定相 たとえば溶質1と溶質2の構造の違いがイオン性であるなら,従来のODSカラムから当社の 逆相+イオン交換 マルチモードODS, Scherzo(スケルツォ)カラムに変更することが有効かもしれません。 微粒子カラムが不要ということではありませんが,分離に必要なのは粒子径だけではない,ということです。「固定相の選択性」は分離科学を支える重要な要素であり,溶質-固定相間の「分子間相互作用」を理解することが分離科学では常に求められています。 |
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矢澤 到 / YAZAWA Itaru ( インタクト / IMTAKT ) |